1位 Ma petite princesse 『王妃の帰還』というタイトルの、本当の意味が明らかになる瞬間。それがエンディングです。これまでは、“王妃の帰還=スクールカーストの頂きから転落した姫が玉座に返り咲くこと”として描かれていました。ですが、最後の最後、“姫”こと美姫には、玉座とは別に帰る場所があることが明かされます。 「ねえ美姫!こっち来なよ!」というノリスケの叫びに、とびきりワガママで可愛い“大切な友達”は応えるのか? …こればっかりは、実際に見て確認して欲しいとしか言えません(見れないんだけどね)。や、何から何までマジで良いんだよ、マジで。
それぞれ、“いい子ぶって愛想笑いしてるなんて”・“いつかいい子になれるといいな”というフレーズが、悪性と善性を象徴していたように思う。 そして、いざ迎えたライブ本番では、白と黒を取り入れた衣装や、幕間における「善も悪も私」のナレーションなど、兼ねてよりのコンセプトが、これでもかというほど表現されていた。こうして見ると、2ndツアーは確かに『善と悪の物語』だった。1stツアーのアンコールで突如映された文言“𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖 will go to the villans world”から、一年越しの伏線回収が果たされたと言っていい。
だが、それだけだったのだろうか。
天秤にかけられていたのは、善と悪だけだったのか。『harmoe 2nd LIVE TOUR「GOOD and EVIL」』とは、本当に“善と悪だけの物語”だったのだろうか? 結論から言うと、答えは“NO”だ。ひょっとしたら善悪さえも、より大きな“目的”を叶える“手段”の1つに過ぎないのではないか?‥‥というのが、私の考えである。
前述したように、“敵役目線の楽曲を歌う”とは、“曲中でその役を演じる”こととほぼ同義だ。これは、感覚としては、アニメのキャラクターによる挿入歌に近い。挿入歌といえば、俳優というよりむしろ、俳優の演じるキャラクターが曲を歌っているイメージだろう。同じことが、『Villans:impress』でも行われていたのだ。『QUEEN』ならハートの女王・『Brilliant and bad』ならクルエラというように、本作の楽曲はキャラクターソングとしての性質が強いのである。 ここで肝心なのは、これらの楽曲を“客前で披露する”とき、演者は歌声に加えて全身をも用いてキャラクターを表現するということ。特に強調したいのは、𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖のふたりの、鬼気迫るまでの“表情の作り込み”だ。
必ずしも同一作品ではないだろうが、貴方にもよく似た瞬間があったのではないだろうか。“あのときの舞台・作品のキャラが、今回のライブに生きている感覚”だ。 言い換えれば、“演じる”という行為によって、これまでふたりが蓄積してきた経験が、ステージにフィードバックされていたのである。つまり、『GOOD and EVIL』は、演者にとっては“現実の経験値”が反映されたライブ。観客にとっては“現実の記憶”が呼び起こされたライブだったのだ。
さて。紆余曲折を経たが、本項は、当初の疑問について一定の回答を出せたように思う。“Fiction and reality”。“空想と現実”。対をなす存在の両者だが、それは、ふたつが対等なことの裏返しなのだ。随分と長くなったが、本記事もこれにて〆とさせていただこう。
‥‥と言いたいところだが、ちょっと待って欲しい。
この記事の、本当の問題提起は何だったか?
“正確さとパッションが対等な理由”だったか?
‥‥いやいや、そんなことはない。
タイトルにもあるように、この記事が真に解き明かしたいのは、“harmoe 2nd LIVE TOUR「GOOD and EVIL」とは何の物語だったのか”だ。本節の冒頭で私は、「善悪は“手段”の1つに過ぎないのではないか」と書いたが、“空想と現実”さえも、とある目的を果たすための手段だとしたらどうだろう。
前節で述べたように、1stツアーで映された“𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖 will go to the villans world”のフレーズは、ユニットの未来を占う指針だった。実際、告知以降、“敵役”をテーマに据えたミニアルバムがリリースされ、“善悪の物語”を謳った2ndツアーが敢行されたのだから、ライブにおける“アナウンス”は、彼女たちの“次なる物語”を暗示していると考えていい。すなわち、2ndツアーの最後に投影された一節、“With "i", 𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖 will go look for LOVE”も、𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖の今後を象徴しているハズなのだ。
ここまでを踏まえると、2ndツアーと𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖の“これから”には連続性があると言えるだろう。そしてこれは、裏を返せば『harmoe 2nd LIVE TOUR「GOOD and EVIL」』は、“with "i", 𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖 will go look for LOVE”への橋渡しの役割を果たしていた──ライブの目的は、𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖の“物語を繋ぐ”ことだったということになる。“善悪”も“現実”も、この目的を叶えるための手段だったのだ。
‥‥だが、これらの要素は、どうして“手段”たり得たのだろうか?
Ⅲ
確かに、“善悪”や“現実”は手段であった。だが、手段とは道具のような物で、用途が分からなければ仕方ない。中世の農民にナイフとフォークを渡しても、彼等は食器を“鋭利な延べ板”くらいにしか思えないだろう。それと同じだ。手段を知るにはまず、“目的”を知らねばならないのである。そこで本項では、“With "i", 𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖 will go look for LOVE”を読み解く所から始めようと思う。このフレーズの直訳は、こうだ。
① “i”と共に、𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖はLOVEを探しに行く
“look for A”は、“Aを探す”という意味の慣用句だが、問題はそこではない。現時点で私は、““i””と“LOVE”を訳さずに残している。理由はそれぞれ、““i””は、引用符(“”)で強調されているから・“LOVE”は、複数の意味を持つ多義語だから。言わば、ふたつの単語は、フレーズを理解するキーワードなのだ。ただし、逆に言えば、これらの訳を誤ると、解釈は明後日の方向に向かうということでもある。たとえば、以下に載せるのは、私の当初の勘違いだ。
さて。これまで考えてきたのは、“LOVEの訳に相応しいのは恋か愛か”のハズだった。にもかかわらず、今や問題意識は、見飽きるほど出てきた二項対立にすり替わっている。すなわち、空想か現実か‥‥だ。『恋=空想, 愛=現実』として、“With "i", 𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖 will golook for LOVE”に代入すべきは、どちらの等式なのだろう?
2/2 : Love is a potion この問題の鍵を握っているのは、やはり2023年10月11日発売の5thシングルだろう。 シングルの表題曲『Love is a potion』は、リリース以前、すなわち2ndツアーで先行披露された過去を持つ。アナウンスと同じ日に歌われた新曲は、いわばその“直系”ともいうべき存在。フレーズの意向を最も強く汲んでいるハズなのだ。 そこで本項では、『Love is a potion』の歌詞から、手がかりになる部分を探してみようと思う。
以上、本項では恋と愛の違いと『Love is a potion』の歌詞を検討してきた。小括すると、“愛という感情”もとい『Love is a potion』の世界観は、どちらも現実的であった。この共通点ゆえに、“With "i", 𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖 will go look for LOVE”における『LOVE=愛』と結論づけられるのである。
『【harmoe】『Love is a potion』Music Video Full ver.【5thシングル】』より引用
ということで、余談はここまで。 “With "i", 𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖 will go look for LOVE”のLOVEが“愛”と訳されるなら、手前の“i”は一人称の意味で読むのが自然だろう。ただし、これまでの文脈的にも、“i”が引用符で強調されていることからも、それが普通の“私”でないことは明らかだ。直前で述べたように、他人を愛するにはまず、自分自身を受け入れなければならない。だからこそ、ここでいう“私”とは、良いも悪いも引っくるめた“ありのままの私”。そして、長らく検討を重ねた一文の訳はこうなるのだ。
③ ありのままの自分と、𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖は愛を探しに行く
Ⅳ
前項にて、私は以下のように述べた。すなわち、“『harmoe 2nd LIVE TOUR「GOOD and EVIL」』は、次なる物語への橋渡しをしていた”。物語の全容が“愛を探す旅”と分かった今ならば、長らく謎だった、目的を叶える手段が“善悪”や“現実”だった理由にも説明がつく。
4-7/n=7: The others だからこそ。もともと正確な踊りを得意としていた岩田さんは、動きに“パッション”を取り込んだ。ミニアルバム『Villans:impress』には、観客が過去の記憶を連想するよう、曲ごとに“特定の役”が設定された。中村彼方さんは、ふたりに善悪を教えるため、2ndツアーのテーマを“図書館”に据えた。空想だけの世界から飛び出すため、セットリストの冒頭に『空想エスケープ』の名を持つ曲を入れた。
‥‥そして、それらの象徴として、『GOOD and EVIL』を冠するライブが行われた。つまり、これまでのすべては繋がっていたのだ。
さて、以上が“『harmoe 2nd LIVE TOUR「GOOD and EVIL」』は、愛を探す旅への橋渡しだった”ことに対する説明のすべてだ。途中、話題が何度も移り変わり、時には混乱を招く箇所もあっただろう。それでも最後まで読み進めて下さった貴方が、少しでも有意義な知見を得られていたのなら、筆者としてこんなに嬉しいことはない。このまま良ければ、エピローグまでお付き合い頂けると幸いである。
‥‥ただし、話はこれで終わりではない。
2ndツアーと𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖の“これから”が繋がっていたように、実は、『GOOD and EVIL』と1stツアー『This is harmoe world』の間にも、れっきとした繋がりがあるのだ。証拠となるのは、1stツアーの中核をなしたアルバム『its a small world』だ。
すなわち“自分探し”とは、他人を愛する上で最初に通らなければならない洗礼。だからこそ𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖は、自分探しの世界旅行に出て、善悪の図書館へと招かれたのである。つまり、『harmoe 2nd LIVE TOUR「GOOD and EVIL」』は、𝒉𝒂𝒓𝕞𝕠𝕖の過去と現在、そして未来を繋ぐための物語だったのだ。
──“Love is a fiction, but love is a reality!” ──空想の恋と、現実の愛!